「鬼禍により壊滅寸前だったその地方はまもなく復興し、大豆を軸とする食品加工業で長く中枢都市としての繁栄を謳歌した。それが希望を取りもどした人々の努力の賜物なのか、空爆で散布された数万トンの豆によってもたらされた福なのかまでは、歴史は教えていない」 (おわり)
posted at 01:51:19
「燃料に大豆サラダ油を混ぜた火炎放射器に追い立てられた鬼たちの息の根を止めたのは、大量の豆爆弾を散布するクラスター豆爆弾だった。命乞いする無辜の人々をかつて引き裂き食らった彼らの口元は、のちに『鬼が豆鉄砲をくらったよう』という慣用句にもなったように、末期の恐怖にゆがんでいた」
posted at 01:45:47
「鬼の弱点がありふれた穀物であるという情報はまさに福音だった。幹線道路のいたるところに積まれた大豆の袋は鬼たちの進軍を阻み、アサルト豆鉄砲で武装した兵士は、戦線をまたたく間に押し戻した。大豆を満載した豆まき爆撃機が、鬼たちの拠点を指して飛び立っていった」
posted at 01:18:42
「鬼が人の生活圏を侵すようになって半年、人類にはこの化物に対処するすべがなかった。八尺の巨体を鎧う赤黒い皮膚は銃弾をも弾き、その振るう金棒のもとにはコンクリートもひとたまりもなかった。災禍を打開する糸口は意外なところにあった。大豆農園だけが鬼の襲撃を受けなかったのだ」
posted at 01:09:06